#宇宙ヤバイ
昼休みだった。
教室の隅っこに陣取って、いつもどおり遊びに来た元親、政宗と、机をくっつけ合わずに適当に弁当を食べていた。
幸村が千切りのピーマンをいちいち除けようとするのを阻止しつつ、白米をもりもりかっこんでいると、いつもは馬鹿な話をしてゲラゲラ笑う眼帯コンビの片割れが、今日は妙におとなしいことに気付いた。
「チカちゃん、どうかしたの?」
むりやりピーマンを幸村の口につっこんで、力任せに口と鼻をふさぎ飲み込ませながら、佐助はとりあえず尋ねる。
すると、焼きそばパンにかじりついたままフリーズしていた元親が、はっとはじかれたように顔を上げた。
「猿飛...聞いてくれるか」
真剣な眼をして、口いっぱいに頬張った焼きそばパンを飲み下す。
政宗は、購買戦争に負けてコッペパンをかじっている。元親の話に興味はあるらしい。いつものように茶々を入れず、珍しくまじめな元親を不思議そうに見ている。
佐助は思わずごくりと生唾を飲み込んだ。
いったい、彼の口からどんなHeavy(とか横文字使ってちょっとバカ宗ちんを意識してみた、と思ってから自分で自分がわからなくなった)な話が飛び出してくるのかと身構える。
幸村は泣きながらコーヒー牛乳を飲んでいる。佐助は反省などしない。悪くないから。
「実はな...俺、昨日の夜真剣に考えたんだ」
元親が、前かがみになり顔を寄せながらつぶやく。人に聞かれたくない話なのだろうか。
(チカちゃんが真剣に考えるなんて...何事だろう。ようやく、将来のこと、っていうか、目先の留年に対する危機感を持ったのかな)
佐助は容赦なくピーマン第2陣を幸村の口に詰め込みながら、ウン、なあに、と同じく前かがみになり顔を寄せる。政宗も聞く姿勢に入った。
「あのさ...もしかしたら、もしかしたらなんだけどな...」
元親が、ズモモモモと重たいオーラを背負いながら、人差し指を立てて呟いた。
「宇宙人ってさ、マジでいるんじゃねえ?」
しばしの沈黙の後、政宗が最初に口を開いた。
「モトチカ...おまっ、それ俺も考えてた!」
「あ、マサムネもそう思う!?」
「ごへっ、おえっ!某、UFOを見たことがあるでござる!」
「え!真田すごくねえ!?」
「すげえ!真田すげえ!」
「宇宙人はいるでござるよ!」
「宇宙ヤバイ!宇宙ヤバイ!!」
「宇宙ヤバイ!!!」
「猿飛もいると思うよな、宇宙人!」
佐助の手から、箸がかたっぽ落っこちた。
「...ウン!」
「だよなー!」
「やっぱいるよな!」
「佐助もそう思うか!」
「ウン!思うよ!」
佐助は反省などしない。悪くないから。
空気を読んだだけだよ、嘘ついてなんかいないよ、日常生活に必要なスキルだよ、と心の中で呟きながら、宇宙ヤバイよねーと笑う自分がよくわからない佐助だった。
当サイトの佐助のエアリーディングスキルは間違った方向に高めです。