繋いだ掌から伝わる熱が心地よい。
家々の間をすり抜けてどこまでも歩いてゆく。
空を見上げると、真夜中の暗闇を切り裂いて、星が流れてゆくのが見えた。
グッドモーニング
簡単に羽織っただけの着物の裾から夜風が滑り込んでくる。
ふ、と息をついてみると、それは薄く白く濁った。
街頭の消えた道の先、月明かりに照らされてきらきらと光るそれは、
道しるべにもならずに掠れて消えた。
黙々と歩く。
草履の裏がじゃりじゃり鳴って、その音はまるで波紋のように空へ広がっていった。
顔を上げれば見慣れた黒髪がちらつく。
黒髪が振り返ればそこには優しい金髪がいる。
一歩離れてあるく。
それでも右手は繋がっている。
なじみの団子屋を通り過ぎ、寝静まった街を突き抜けてその先へと進む。
遠くの方で鳥が鳴いた。
夜明けが近い。
足を止めず、右手に力をこめたまま、落ちる星すら追い抜くようにただ前だけを見据えた。
きつく閉じられた掌は少し汗ばんでいた。
愛していた。
夜明け前の空気で肺を満たす。
黒髪が揺れた。
金髪も揺れた。
愛していた。
世界を 空を 友を
愛していた。
手の中のぬくもり
黒髪が振り向く。
金髪が立ち止まる。
煌めく星々を嘗め尽くすように
「愛してる」
山を飛び越え、空を駆け抜け、
白い光は音もなく広がっていった。