赤銅色の太陽が、広大な砂漠の砂一粒一粒を、じりじりと音を立てながら焼いている。
その砂にしたたる汗をしみこませながら、二人の男が歩いていた。
一人は音もなく、砂の上を滑るように軽やかに、もう一人は流れる粒子に足をとられながら、もつれるようにのろのろと前へと進んでゆく。


「早くしないと、夜に追いつかれちまいますよ」


おまえはいいよ、そんな風に簡単に歩けるんだから...言われた土方は思った。彼は軽い、足取りも、態度も、何においても。
くそ、と悪態をつきながら、ざらつく砂に埋まる足を無理やり引き抜き、砂丘を登る。
すでにそこを登りきった男―――男というにはまだ若すぎるかもしれない―――を見ると、彼の髪は沈み始めた日に透かされて、蜜色に甘く輝いていた。


「総悟、あまり先に行き過ぎるなよ、見失っちまうから」


土方は、ようやく頂上までついたと思ったら、すでに次の砂丘の半ばまで登ってしまっている彼、沖田に向かって声を張り上げた。
小さく頷いたような、それとも目の錯覚か、突如吹き荒れた砂嵐に視界をふさがれ、土方には彼が返事をしたかどうかはわからなかった。









彼らの背後からは夜が迫っていた。
無数の冷たい星々の光がまぶたをつらぬき、墨汁のような闇がすべてを包み込み始めている。
境界には群青が敷かれ、太陽の投げかける影をかき消して、少しずつ体温を奪ってゆく。









砂嵐の過ぎたあとに沖田はいなかった。
陽炎のように揺らめくこともなく、そこにいたはずなのに、影も形も見えなくなってしまった。
土方は呆然と膝をつき、砂丘に埋もれた両手を見た。


手を握っていればよかった。


やがて男の背中にも闇夜の布がゆっくりとかけられ、彼らの行くはずだった果てまでも、男の体温だけを音もなく運び去っていった。









目を開けると天井が見えた。
左手に触れる指先は冷たい。
寝返りを打つと、ぼんやりとゆらぐ視界に、朝日を透かした蜜色の髪が見えた。
ここは最果ての地だ。