新八くんや神楽ちゃんは、銀さんが抱えてなくっても力の限りしがみついていそう。
掌
朝目が覚めるとまず窓を開けていた。
日の差し込む窓から数歩離れたところで深呼吸をすると、
まだ生きているなァ、と実感できるのだ。
毎朝そんなことを確認するのか、と言われたこともあるが、
別にそういうつもりでしていたわけじゃあない。
ただなんとなく、癖になってしまっている動作で、
それは別段重要であることでもなかった。
窓を開けても開けなくても、日々は変わらず過ぎ去ってゆく。
俺は生きていて、そしてその幸せのうちに寝起きすることができるから。
「銀さん銀さん、朝ご飯冷めちゃいますよ!いつまで寝てんスか!」
「私とっても暇アル!銀ちゃん遊んでヨ!」
奴等が来た。毎朝の恒例行事だ。
朝になればぎゃあぎゃあ小うるさいガキ共が自分を起こしにきて、
やれ布団干すから起きろだの、暇だからどっかつれてけだのと部屋中を暴れまわる。
メガネの方はまだいいが、チャイナ娘の方にやられた日にゃあ事である。
甘えたい年頃なのは判るが、もう少し自分の力を考えて行動してもらいたいものだ。
「銀さん、いい加減起きてくださいよ!」
「うるせェな、銀さん寝不足なのよ。もう少し寝かせて。」
「寝不足ってアンタ、昨日7時に寝てたじゃないスか!
今10時ッスよ!どんだけ寝る気だ!」
「ほら俺成長期ぅぐッ」
「銀ちゃん、遊んでほしいアル!!」
「ちょ、おまッ 神楽!死ぬって俺、放せ、ちょまッ ほんと…!!」
「起きろよ銀さん!!」
「銀ちゃぁぁん!!」
「死ぬッ…!!!」
窓を開けていたのはもう昔の話で、今はそんなことはしない。そんな暇はない。
毎朝三途の川を半分まで渡って帰ってくる生活。
それでもまあ、幸せなんだろう。
なんの気兼ねもなくぶつかってくる二人の頭を撫でてみると、それは掌にじんわりと暖かかった。