あと何ヶ月も生きられないと言われてから2ヶ月がたった。
勇人は痩せて、顔色も悪くなって、本当に今にも死んでしまいそうだった。
彼の入院生活は終わって、後はもう好きにしていいと医者に言われたそうだ。
嬉しそうに、寂しさを隠した顔で、これでまた跳べるよと笑った。
人のいなくなったグラウンドの隅っこで、夕焼けが眩しかった。
世界中が溶け出すような、胸の奥から何かが染み出してくるような光の中で、勇人はいつだって高く高く跳んでいた。
細く弱弱しくなった手でポールを握り締めて走り出す。
右足、左足がたんたんと音を立てて地を蹴る、風を切って。
ぐんとポールがしなる。浮き上がり、跳ね飛ばされるように勇人の身体が宙に舞う。
電信柱も、ざわめく木立も、古びた校舎も、飛び交う白い鳥も飛び越えて、大気圏まで突き抜けるようなジャンプ。
心臓の音が共鳴しているようだった。勇人の感じる風が俺の頬を撫でた。
ふわと浮いた勇人の身体は、次の瞬間棒を巻き込んだままマットに重く落ちた。
「本当に死んじまうよ」
俺は泣いた。勇人は濃紺に染まり始めた空と対峙しながら凛とした声で言った。
「流星みたいに死にたい」
星屑一欠け残さないまま光の速さで宇宙にとける