青い空から溶け落ちるように、葉に乗る朝露が滑り落ちるように、彼の人の魂は透明な灯りを灯したまますっぽりと心の奥に消えた。
土饅頭に突き立てられた不格好な鋸刀に揺れるのはニヒルなてるてる坊主で、さあ晴れるやハレルヤ頭を垂れろと稲穂を見下ろす。
「ヘイさんごらんなさいな、金色の原っぱだ、あなたの好きな米の絨毯だ」
ゆるりと風が吹く。
灯火はまだまだ熱を持ったままちりちりと心臓を焼いている。
「食いたがっていたでげしょ、持ってきましたよ」
右手に持った稲穂を指先に弄んでから、土饅頭に添えようとして、やめた。
口元にそれを持っていき、薄く開いた唇から接吻のように食み、奥の歯で咀嚼し飲み下す。
茎がぽろりと口から落ちて、冷たい手のひらを胸に当てると、どくどくと脈打つ血の流れを感じた。
「どうですか、今年の米は」
てるてる坊主がまた揺れて、まだこの魂は揺るぎなくあり、口に残る殻の不快な感触にそれでもため息は出なかった。
きみと世界とぼくは繋がっていますか